オンライン教育の落とし穴

2020/08/28 - 乃万 暢敏 - ブログ記事

新型コロナウイルス感染に伴う、「緊急事態宣言」の発出後、教育界はダッチロールを繰り返している。

原因は、各学校が取り入れたオンライン教育の難しさにある。

私が代表取締役を務める有限会社N&N傘下の学習塾「マンツーマン学習指導会グレイススタディケア」においても、休業措置やウイルスへの対抗措置など、混乱を極めている。その背景には、各学校間でのIT格差が広がってきていることに注目するべきだ。

例年であれば、8月は夏期講習会の真っ盛りで、既存の生徒以外に、多くの生徒が9月の入会(入塾)のため、体験もかねて授業に参加しているはずである。塾側も8月のお盆休みで1週間ぐらいお休みを頂くのであるが、今年は休日返上で授業をこなしている。本会は創業38年を迎えるが、これまでこのような経験は一度もなかった。

原因は?それは学校間で、オンライン授業の調整が上手く行っていないことが挙げられる。各学校により対応が様々だからである。

明暗を分けたのは、有名私立校と公立学校である。この指導会は田園調布に位置しているため、通う生徒は、概ね、世田谷区と大田区に居住している。某有名私立学校では、1学期の初めから、ZOOMを積極活用し、オンライン授業を確立していた。リアルの授業には劣るものの、シラバス的には全く問題がない。

一方、公立学校では大混乱が起きている。前段の私立校とは異なり、オンライン授業の体制が全く整っていない。そのため、生徒は登校を制限され、やみくもに渡されたプリント類を抱えて、右往左往していた。プリントがあるのは、まだいい方で、未だ履修していないところは、塾で授業をしてもらわなければ、手の付けようがない状態だった。

幸い当指導会は、生徒1名に教科の先生1名が付く、完全マンツーマンのスタイルであるから、何とかなっているのかもしれない。ただ、各講師が困っていることは、今現在の学校の進度、これがさっぱり掴めない点である。そのため、塾長を中心に、各生徒、各保護者とlineで繋げ、日々連絡を取りながら、授業を進めている。

オンライン授業のために、各教育委員会は生徒1名に1台のパソコンを提供するとしているが、最近になって、ようやく動き出したようである。それはそれで良いことだと思うが、機器提供側が気づいていない大きな落とし穴が存在し、そのため提供された機器が十二分に機能していない、という問題である。

それは、家庭内のITとしてのインフラがどの程度のスペックを持っているかどうかにかかっているからである。通常の家庭であれば、せいぜいパソコンが1台あるかどうかだ。それも、安価なPCのため、余計なアプリケーションがプリインストールされており、アンインストールしても、使用していないDLLファイルなどが大量にたまってしまう。こまめにチューニングすれば良いのだが、かなりPCに精通していないと難しい。結局、「壊れている」ということになっているのが現状である。

これはハードの部分だが、現在のPCはオンラインが基本である。要は通信環境がきちっと確保できているかにかかってくる。さすがにADSLでWEBに接続している方はいないと思うが、いくら高速な「光回線」を引き込んでも、家中に正しくWiFiが飛んでいるかによる。ここがしっかりと構築されていないと、多くのデバイスはインターネットにアクセスできなくなるのが落ちである。

自粛休業中はどうだったのか?ご主人は会社から支給されたPCを持って帰って、自宅でテレワーク。奥さんも仕事をしているケースは多い。こちらも事務系であれば、自宅でテレワークとなる。プラス、各自がスマホを持っていて稼働させている。では子供たちがオンライン授業をしようとした時、問題なく動作するのか?甚だ心もとない。前段でも述べた通り、有名私立学校でオンライン授業がスムースに進められたのは、各家庭が家庭内のデバイス、通信環境を素早く整えられた結果である。別に金持ちとか、貧乏だとかは関係ない。皆さんは1台のWiFiルーターで、何台ぐらいのデバイスを処理することができるかご存じだろうか?こうしたIT難民が増えてきているのも、社会情勢の問題の1つであろう。

さて実際のオンライン授業だが、これは授業をする側が、如何に生徒たちに声をかけ、質問させてインタラクティブな環境を作り上げているかによる。私も生徒側に立った時の受け止め方を調べるために、様々なオンラインセミナーに参加してみた。

その結果からは、内容のない、一方的な講義だと、異様に眠くなる。リアルでもそうだからオンラインになれば一層の事だろう。しかし他方では、インタラクティブなやり取りができる環境が用意されていれば、不思議と眠くならない。要は講義側(先生側)がどの様な意識を持って授業を進めるかによる。

子供たちは、学校の授業中でも周りの友だちと会話をしている。ストレスを削減する効果もあるかもしれない。こう言うと、現場からは、生徒が授業に集中しなくなる!とお叱りを受けそうだが、事実だから仕様がない。リアルな授業でも教師の力量次第で子どもは伸びていく。

まずは、年間シラバスを見つめ直し、力を入れるところ、抜くところから検討し直すことが、喫緊の課題だろう。