両陛下のビデオメッセージの期待があるが

2020/08/24 - 乃万 暢敏 - ブログ記事

新型コロナウイルス感染が拡大している中で、多くの方から質問を頂いているので、個人的な回答を述べさせていただく。

なお、本回答はあくまで個人的見解なので、宮内庁等の見解ではないことを、先ずお断りさせていただく。

国民の多くの方は、平成30年に上皇陛下がご退位のビデオメッセージを発せられたことをイメージされている上でのご質問ではないかと思う。しかし、ご退位のメッセージは、飽くまで皇室内での出来事であり、政治的要素は存在しない。

しかし今回の新型コロナウイルス感染に関しては、内閣における「新型インフルエンザ感染症」にかかる法律を一部改正して、いわゆる特措法で処置をした。つまり、極めて政治的な内容である。

このように申し上げると、「それでは上皇陛下の退位発言も皇室典範の特措法に基づくものではないのか?」と反論される向きもあろう。しかしこの時は、天皇陛下(現上皇陛下)のビデオメッセージがあってから、それを事後承認する形で、皇室典範に特措法を設定した訳で、前に陛下のお言葉があったのであり、今回とは、少々事情が異なる。

何度も申し上げるが、コロナ禍に対する天皇陛下のお言葉はなく、「新型インフルエンザ感染症」の法律に、新型コロナウイルス感染に関する特措法を定めたことが、先になるため、それを追随する事は、天皇の政治的不介入に抵触する恐れが多分に懸念されることだ。

私は法律的なことは専門ではないが、これに対する法的根拠は、法制局長官にでも聞いてみたいところである。

皆さんも「玉音放送」という言葉を聞いたことがお有りだろう。「玉音」とは天皇陛下の肉声の事をを指す。

昭和20年8月15日、日本はポツダム宣言を受諾し、終戦を迎えた。明治以降、天皇陛下の肉声は、歴史上3回しかない。
1つは「終戦の時の玉音放送」、2つめは「東北地方太平洋沖地震」に対するもの。そして最後は、現上皇陛下の譲位のビデオメッセージである。

なぜ、このようなことを言うかと言えば、それだけ、国民全体への、天皇陛下のお言葉は重いのである。そして何よりも政治的問題への関与は避けなければならない。

しかし、両陛下もコロナ禍で苦しむ国民を励ましたい!と思われているに違いない。だからこそ、専門家会議の尾身会長から事情を聴かれたときに、その感想として、陛下のお言葉をさり気なく込められたわけである。

本年の戦没者追悼式のお言葉の中にも、ある意味唐突ではあったが、コロナ禍に対するメッセージを組み込まれたことと思われる。陛下のお気持ちは、私にはよく解る。