久々の天皇陛下のお言葉を拝聴して

2020/08/16 - 乃万 暢敏 - ブログ記事

例年8月15日に執り行われている、全国戦没者追悼式が今年も挙行された。コロナ禍の中、国立障害者リハビリテーションセンター及び国立職業リハビリテーションセンター創立40周年記念式典(令和2年1月22日)以来、久々の陛下のお言葉を拝聴した。

下記に今上陛下と先帝のお言葉を、掲載させていただく。
(出典:宮内庁ホームページより転載)

令和2年8月15日 全国戦没者追悼式における天皇陛下のお言葉

本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。

終戦以来75年,人々のたゆみない努力により,今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが,多くの苦難に満ちた国民の歩みを思うとき誠に感慨深いものがあります。

私たちは今,新型コロナウイルス感染症の感染拡大により,新たな苦難に直面していますが,私たち皆が手を共に携えて,この困難な状況を乗り越え,今後とも,人々の幸せと平和を希求し続けていくことを心から願います。

ここに,戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ,過去を顧み,深い反省の上に立って,再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い,戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し,全国民と共に,心から追悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。」

平成30年8月15日 全国戦没者追悼式における天皇陛下(現 上皇陛下)のお言葉

本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。

終戦以来既に73年,国民のたゆみない努力により,今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが,苦難に満ちた往時をしのぶとき感慨は今なお尽きることがありません

戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ,ここに過去を顧み,深い反省とともに,今後,戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願い,全国民と共に,戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し,心から追悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。

黄色部分は、今上陛下と上皇陛下のお言葉の違いが読み取れるところである。

既に他界した父は、予科練出身の特攻隊員だった。祖父が満鉄の職員だったことから、大連で生まれ、大連一中を繰り上げ卒業し、海軍に入隊した。厳しい訓練、航空機がなく、燃料もない。そうした口惜しさの中で終戦を迎えたのは内地であった。まだ20歳にもならない父の両親と家族は大連の地で戦死し、我が家に帰ることもできず、一人取り残され、多くの辛酸をなめた。

こうした体験をした日本人は少なからずいるはずである。誠に恐れ多いが、上皇陛下も終戦を体験された。

私は、今上陛下の「多くの苦難に満ちた国民の歩みを思うとき…」というお言葉を拝聴した時、「ああ、これで戦後は終わりを迎えたのだ」と思った次第である。

陛下も私も、前の大戦を実体験していない。それが故に、上皇陛下のお言葉である「往時をしのぶとき」という文言が「国民の歩みを思うとき」というふうに変わったことに私も感慨を覚えた。

これから令和の新時代のスタート!昨年、陛下のご即位を国民挙げてお祝いしたが、まさかこのような事態に陥るとは、誰も予想していなかったに違いない。

「陛下のコロナに対するお言葉」への期待があることは重々解るし、両陛下もすぐにでも国民の前に出て、国民に寄り添いたいというお気持ちであることも、よく解る。

しかし、「四大行幸啓」である、全国植樹祭、国体、国民文化祭、海づくり大会が全て中止になっている以上、陛下も動くに動けないのである。

今回のお言葉の中、緑色の部分が、その場に相応しいかどうかは分からない。しかし両陛下が何としても国民に伝えたかった事の表れであり、この機会を逃さずに国民にメッセージを出されたことは、大変素晴らしいことだと思う。

私も昨年のお正月以来、陛下の拝謁を賜ることが出来ていないのが、もどかしく感じる。